なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「そうなんですね。分かりました。

でも朝廷に用事ができることなんてないと思いますから大丈夫ですよ」


 そうこう話しているうちに、あっという間に府庫へ辿り着いた。


 芸術の森といわれるだけあって、殿舎に木々が鬱蒼と茂っている。


誰も来ないからか、手入れはまったくといっていいほどされていないようだった。


(これは……。誰も近寄らないわけが分かったわ)


 壁には蔓が絡まり、老朽化していてどんよりと暗い。


なんだかお化けが出てきそうな雰囲気だ。


「大丈夫、中は意外と綺麗ですよ」


 林冲は笑いながら殿舎へと入って行く。


朱熹もその後に続いた。


 林冲の言っていた通り、中は解放感があって明るかった。


 蜘蛛の巣も張っていないし、お化けもいなさそうだ。


「一階は大ホールで、楽団などが来た時に練習場として使っています。

その隣の部屋が絵画室。

有名な画家が描いた絵を保管しております。

そして、二階が府庫となっております」
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