なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 階段を上がり、扉を開けると、部屋一面に圧倒されるほど多くの本が並べられていた。


「凄い、こんなにあるなんて……」


 平民は字を読めない者も多くいるので、本は身近な存在ではない。


 こんなにも多くの本があることに驚いた。


「自由にお読みいただいて大丈夫ですよ」


 感極まっている様子の朱熹に、林冲は優しく告げる。


「これ、借りていってもいいかしら!?」


「ええ、もちろん」


 朱熹は興奮して目が輝いた。


(こんなにもたくさんの本があるなんて。宝物に囲まれているようだわ)


「私は奥の方で本を読んでおりますので、終わりましたらお声掛けください」


 そう言って林冲は奥に行って姿が見えなくなった。


 朱熹は夢中になって手あたり次第に本を開いていく。


 胸がドキドキして、自然と口角が上がってしまっていた。
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