なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 可愛いと言われて、曙光は本気で嫌がった。


 ムキになる顔も可愛いんだけどな、と秦明は心の中で思うも、これ以上逆鱗に触れてはいけないので黙っておく。


「朱熹ちゃんが寂しがっている理由は、曙光が会いに来てくれないからだよ」


 ちゃん付けで呼ぶな、慣れ慣れしい、と曙光は釘をさしたかったが、まさか寂しがっている理由が会いに行かないからだとは夢にも思っていなかったので驚いた。


「どうして?」


「お前、素で言ってるのか? 新婚なのに一度も会いに行かないなんておかしいだろう」


「でも、秦明も言っていたではないか。朱熹は結婚が嬉しくないようだと」


「確かに、曙光の一方的な片思いであるということは分かったけど、それとこれとは話が別だろ。

朱熹ちゃんは正妃になることを受け入れていた。

結婚したにも関わらず夫が訪れないなんて、屈辱だろうよ」


「……そういうものか?」


「そういうものだ!」
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