なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 秦明は断言した。


皇帝となった曙光に直接意見できる者は少ない。


だからこそ、秦明は厳しく言う。


「だが、俺は後宮に行ったことがない」


「誰だって初めてを経験して慣れていくものだ」


 いや、でも、色々と込み入った事情が……。


 曙光は真実を秦明に話すか迷った。


 一人くらい朱熹がなぜ皇后になったのか理由を知っている人がいてもいいかと思った。


 秦明は朱熹の偽の肩書を作るために、朱熹が平民出身であることを知っている。


 それに、唯一腹を割って話せる人物だ。


曙光は覚悟を決めた。


 部屋を見渡すと、曙光と秦明以外に人はいなかった。


皆、会議が終わり早々に出て行ったようだ。


 曙光はおもむろに立ち上がり、扉まで歩くと、黙って部屋の鍵を閉めた。


「どうした? やけに厳重だな」
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