なりゆき皇妃の異世界後宮物語

　不思議そうにしている秦明に、曙光は鋭い眼差しを向ける。


「これから話すことは門外不出の機密情報だ」


　秦明の顔からも笑みが消えた。


　二人は再び椅子に座り、曙光はゆっくりと話し始めた。


　人の心の声が聴こえる能力を持つ一族が存在したこと。


　彼らは突然姿を消し、そして曙光の前に突然現れた。


　けれど朱熹は、先祖が皇帝に仕えていたことを知らなかった。


まったくの偶然により二人は出会った。


　再び皇帝の側で仕えてもらうために、朱熹に皇后の位を与えた……。


　曙光が話し終えるまで、口を閉ざし神妙な面持ちで聞いていた秦明が、ようやく重い口を開いた。


「なるほど、それで皇后にしたわけか。

皇后なら側室と違い、後宮から外に出ることができる」


「これまで皇帝に仕えていた人の心が聴こえる者は男だけだったから、朱熹の待遇をどうするか悩んだ」