なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「どうして今までは男だけだったんだろうな。

その一族と交われば、皇族にも人の心が聴こえる能力が持つ者が生まれるかもしれない。

そっちの方が何かと好都合だろう」


「女には遺伝しないと彼らは言っていたんだ」


「じゃあ、どうして朱熹ちゃんに……?」


 秦明の問いに、曙光は少し考え込むように間を置いた。


「それは分からない。もしかしたら、元から女にも遺伝していたのを彼らは隠していた可能性もあるし、そうではなく彼女が特別なのかもしれない。

いずれにしても、この特異な能力をどのように扱えばいいのか、正直迷っている」


「……迷う?」


 秦明は目を細めて、曙光の考えを探った。


「皇后にして良かったのか。

人の心が聴こえる彼らは、皇族に嫌気が差したから宮廷から姿を消したのに、こんな無理やりな形で何も知らない彼女と婚姻を結んでしまった。

再び能力が政治利用されることを彼らは望んではいなかったはずだ」
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