なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 訓練すれば心の声を聴かれずに済むのか。


今度朱熹ちゃんに会うまでに習得しておかなければいけないな。


でも、まったくできる気がしないぞ、と秦明は思った。


「心の声が聴かれないなら、じゃあ何が問題なんだ」


「注意していれば心の声は聴かれることはないが、まれに、とても強く思ったことが、胸に響くように聴こえることがあるらしい」


「ああ、それが引っ掛かっているのか」


「それは滅多に起こることじゃないから心配はしていない」


「じゃあ、なんだよ」


 秦明は再び苛々してきた。


「……分からない」


「分からない!?」


 秦明は怒るを通り越して呆れた。


 曙光が分からないなんて言ったのは、長い付き合いだが初めてのことかもしれない。


 いつも冷静沈着で、的確に物事を判断し、肝の据わった勝負師のような一面もある曙光が、分からない?
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