なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 曙光は、以前会った時とあまりに違う女性らしい衣装に驚いた。


 透けるショールから薄く見える細い二の腕が目のやり場に困る。


 曙光は一旦気持ちを落ち着かせ、いつものように皇帝の威厳を保ちながら言った。


「堅苦しい礼はいらん。顔を上げよ」


 皇帝陛下の声に、朱熹は従った。


 曙光は夜伽に訪れたというのに、宮廷服のままだった。


着替える時間がなかったのだろうかと朱熹は思った。


(どうしましょう、陛下の夜服を用意していないわ)


 今香に急ぎ用意するよう頼むか、それともそれは出すぎたまねか。


 朱熹が迷っていると、曙光は寝所ではなく、寛ぐための卓が置かれている部屋へと歩いて行った。


 朱熹は慌てて立ち上がり、用意してあった酒肴を卓の上に置いた。


 曙光は椅子に座ると、ひどく疲れた顔を見せた。
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