なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「今宵、訪れたのは、そなたの世間体を守るためだ。

結婚したのに夫が訪れないのは、外聞が悪かろう。

安心しろ、そなたには触れない。

そなたの嫌がることはしない」


 そうだったのかと朱熹は驚いた。


 確かに後宮内では、陛下にまったく相手にされていないとあざ笑う女性たちも多くいた。


けれど、朱熹は陛下の寵愛を受けるために後宮に入ったわけでも、なりたくて皇后になったわけでもないので全く気にしてはいなかった。


「私のことなど、気にしていただかなくて大丈夫でございます」


 朱熹は笑って言った。


すると曙光は真面目な顔をして首を振った。


「余が言うことではないかもしれぬが、これ以上そなたに辛い思いはさせたくないのだ。

不自由な身の上にしてしまって、すまない」


 朱熹は純粋に驚いた。


一国の主である御方が、平民に謝るなんて……。
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