なりゆき皇妃の異世界後宮物語
心の声だけではなく、直接意見してくる者もいた。しきたり上では皇后は後宮から出られる。


しかし、女性のお付きがいないのに後宮から出るなんてあり得ないというのが彼女たちの言い分だった。


(何をしてもよく思われないなら、自分の思うようにやるわ!)


 朱熹は今香を呼び、すぐに後宮を出る手配を整えてほしいと指示した。

 
 宮廷の案内役はすぐに見つかった。


 後宮の出入り口へと行くと、林冲が立ったまま寝そうな様子で待っていた。


「林冲!」


 知っている者に会えたことが嬉しくて朱熹の声は弾んでいた。


『おっと、危ない、寝るところだった』


 林冲はハッと目を覚まして、朱熹の姿を確認すると、小柄な背を屈んで礼をした。


「朱熹様。お久しぶりでございます」


 初めて後宮の外に出てから一週間が経過していた。


 借りてきた本はもう読み終わっている。
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