なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「やあ、また来ていたんだね」


「また盗み聞きしてしまってごめんなさい」


「お客は大歓迎さ。それが虫でも鳥でも人間だとしても」


 陽蓮にとっては虫も人間も大差ないらしい。もちろん朱熹が皇后であることなんて、彼の中では些細なことだ。


(不思議な人……)


 朱熹は心の中で呟いた。


 陽蓮は、朱熹が手に持っている本に目を置いた。


「その本……、仙晃伝(せんこうでん)だよね?」


「あっはい、面白そうだなと思ったので」


 朱熹は持っている本を掲げた。


「うん、なかなか面白かったよ。

架空の歴史小説だけど政治や反乱の描写がとても良くできている」


「全部読んだんですか!?」


仙晃伝は全十七書もある。


「うん。というか、府庫にある本は全部読んだ」


「えっ!」


 府庫には一万冊以上の本が置いてある。


まさかそんなに読んでいるなんて。
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