なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「それはそうだが、あまりにも突然だった」


 秦明は頭が痛くなってきた。


 皇帝がお渡りしないことを宮廷の幹部たちは心配していたが、秦明は時期が来れば大丈夫だろうと楽観していた。


だが、想像以上にこじらせているらしい。


「突然とはいっても、皇帝の誘いを断るほど、あの子も愚かではないだろう」


 秦明はため息を吐きながら言った。


「彼女は私が望めば受け入れたと思う。でもそれは嫌なんだ」


「なにが嫌なんだよ」


 嫌ってなんだよ、乙女か、と秦明は心の中で突っ込んだ。


「彼女の気持ちを尊重したいし、何より世継ぎを急いで作ろうとも思っていない」


「なっ……、お前、自分の立場を分かってるのか?」


「分かっている、もちろんだ」


「十年前のあの災害で、皇族のほとんどを失った。

お前は一人でも多く子供を作り、血を絶やしてはいけないんだ。

その重要性が分かっているのか?」
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