俺のもの
ある日のこと
ここは彼氏と同棲する1LDKのマンションのキッチン。
カウンターキッチンになっていて、こぢんまりとしているけど使い勝手がよくて、ここが気に入ってこの部屋を借りたようなもの。

そして、私の目の前には2人分の食材が詰め込まれた白い冷蔵庫。

今私は、鼻歌を歌ってしまいそうな程ご機嫌。
だって、その冷蔵庫の扉を開けたらそこには!暑い中、汗だくになりながら並んで買った限定のプリンがあるから。

彼氏は、晩ご飯の後先に食べてた。
私はお風呂上がりに食べようと思って、取って置いたんだ!

よくテレビで特集されてて、ずっと気になってたんだよね〜!

パカッ。

ウキウキしながら、冷蔵庫の扉を開けた・・・けど。

「ない!」

真正面に置いたはずのプリンが見当たらない。

晩ご飯の残りを冷蔵庫に入れる時に、間違えて押し込んじゃったかな?

もう一度くまなく探すけど、やっぱり見つからない。

「なんでないの〜!?」

思わず大声が出てしまった。

すると、私より先にお風呂から上がっていた彼氏が、キッチンに背を向けるように置いてあるソファーから声だけを掛けてきた。

「何がないの?」

「プリン! お風呂上がりに食べようと思って、楽しみに取っておい・・・あ」

言いながら、キッチンから出てソファーに座る彼氏が見える位置までくると、彼氏がスプーンを咥えながら振り返った。

まだ髪がちょっと濡れてるみたいで、いつもよりペタンとしているけど、サラサラな髪の毛。
朝剃った髭が、本当にちょっとだけど伸びてきてる。
外ではビシッとスーツで決めているけど、ジャージで寛いでいる。
カッコいい彼氏のこんな無防備な姿、私しか知らないんだろうな。
思わず顔がにやけてしまう。

・・・のを止めたのは、彼氏が左手に持っていたプリンのカップ!

「それ、私の! 自分のはさっき食べてたじゃん!」

彼氏がプリンのカップを持ち上げながら言う。

「置いてあるから、いいのかと思って」

私は地団駄を踏みそうな勢いだ。

「よくないよ! 蓋に名前も書いてたでしょ!」

わざわざ蓋に名前まで書いて、アピールしていたのに、何で!

限定物で、次いつ買えるかわかんないのに!と声を荒げる私に、彼氏はシレッと言った。

「俺の物は俺のもの。お前の物も、俺のもの」

ジャ◯アンかよ!

私がイライラしていると、彼氏が立ったままの私をソファーに座った状態で覗きこんでくる。

謝ったって、しばらく許してあげないからっ!
食べ物のうらみは怖いのよ!

「だから、お前は俺のものね?」
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