【短】祭の夜に会いたくて


「混みすぎて嫌になる」



 お祭りの雰囲気は好きだけれど、人混みは嫌い。
 だからわたしはお祭りの日はベランダにいる。


 家族が勝手に焼きそばとかお好み焼き買ってきてくれるし、わたしは楽して祭りを楽しむ。


 あ。イカ焼き頼むの忘れちゃった。電話する? 
 いや、この混雑だもん。気づいてくれないか。



「あすか!!」



 どうしようかと思っていたら、階下からわたしを呼ぶ声。


 今年もあいつが来た。



「ハル、今年は遅かったね!」



 大声で答えてやると彼は笑う。


 金に近い茶髪で、紺色の浴衣を着こなして、どこか不釣り合いなのに似合う。
 これがイケメンってやつなのかな。

< 2 / 13 >

この作品をシェア

pagetop