【短】祭の夜に会いたくて


 多分、隣町の高校。こんなイケメン、わたしが通う高校にはいない。


 そういえば、ハルのことよく知らない。
 ずっとこういう関係だもん。ベランダにいるわたしに話しかける変なやつ。



「ハルさ、花火見に行くの?」

「そのつもり!」

「もう十分くらいで始まるよ! 急いで行きなよ!!」

「今年はさ……」



 そう言い始めたハルの右手にはイカ焼き。わたしが食べたかったやつだ。羨ましい。
 近くにお店、あるのかな。



「今年はあすかと見たい」



 イカ焼きに見とれていて、わたしはハルの言葉を理解するのに時間がかかってしまった。



「もう一回、言って」

「だから、あすかと花火見たいの!」



 大声でのやり取りは道行く人達に丸聞こえ。さすがにわたしは恥ずかしくなってきた。

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