【短】祭の夜に会いたくて


『あすか! 俺、あすかが好きだ! 付き合って!!』



 恥ずかしくてどうしようもなかった。
 だから考えさせてと言って、ベランダから離れたんだ。



『じゃあさ、オーケーだったら来年は浴衣着てきてよ!』



 そういう約束をした。


 ベランダ越しの約束は、わたしを熱くした。言われなくてもわたしは、ハルが好きだったから。


 ただ、どうしてもベランダから出られなかっただけ。ただの意地かもしれない。



「……好きだよ」

「え?」

「わたしに話しかけてくれた日から、好きだったよ。ずっと、今でも」



 繋いだ手が熱くて、初めてハルの体温を感じて、男子らしい骨張った手も、力強く引っ張る所も、みんな初体験。


 人混みの中にいるはずなのに、そんなこと忘れちゃうくらいに優しさに包まれてる。


 ハルがちゃんとわたしをリードしてくれるから。

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