【短】祭の夜に会いたくて
「こっち来て」
そうやって歩く間にも花火が夜空を彩る。
胸に響く音が重なって、ドキドキが止まらなくなる。
でも、いつの間にか人混みから抜けて静かになってきた。
振り返れば、通りからだいぶ離れた所を歩いているみたい。
「今日はいきなりだったし、ここで勘弁してくれよな」
「ここ?」
小さな公園。
音のした方を見るけれど、花火なんて見えやしない。
これは失敗だったかなとハルを見上げる。でも彼はまだ諦めてない。
「どうするの?」
「こっち」
わたしは誘われるまま滑り台の上にのぼる。