【短】祭の夜に会いたくて


 大輪が空に咲く。
 さっきまで見えなかった花火が、目の前で綺麗に輝いていた。


 ちょっと遠くて小さく見えるけど、充分だった。
 すごく、すごく綺麗。



「わたしこそ……よろしくお願いします」

「ヨッシャー!!」

「あ、危ないよ!」

「あ。悪ぃ」



 滑り台の上にいること、忘れてたのかな。
 思いっきりジャンプするから、違う意味でドキドキした。


 そんなに嬉しいんだ。こんなに喜んでくれるなら、もっと早く言えばよかった。


 ずっと、好きで好きでたまらなかったのに。
 夏が来るのを待ち侘びて、ただ待っているだけで。


 本当につまらないことをしていた。
 もったいない時間を過ごしていた気がする。

< 9 / 13 >

この作品をシェア

pagetop