君はアイドル
「…もうこんな時間か。
帰るか。」
時計を見て変装道具を探し出した彼に思わず
「えっ泊まってかないの?」
と言ってしまった。
そんな私に動きを止めてニヤリと笑う
「期待してたんじゃねーの?
泊まりたかったら泊まってってもいいけどどうする?」
「ち、違う!
だってホテル来てちょっと喋って帰るって、何しに来たの?」
「だから、下手に外で女といるよりこーゆーとこいた方がゆっくり話せるだろ。」
「あ、そういうこと…」
大変だな、普通にご飯も食べられないなんて
改めて凄い人とこうやって話していると実感する。
ホテルの前でタクシーを拾ってくれて、お金を渡された。
「…じゃ、またライブの時にな。」
コクコク頷く私に手を振り、アイドルは顔が全く分からない風貌のまま別れた。
この数時間の出来事が私の人生を変えるなんて思いもせず、疲れたなぁ。とタクシーの中で眠ったのです。