ジェニー達の集う場は、永遠の探偵喫茶
「...」
「...」
 ああ、なんだか気まずくなったわ。
 何か言おうとして、口を開く。
「......それにしても、リングスネークの娘であるあなたさえも、私のことを知っていたなんて」
 そこまで言って、気付いた。今、彼女の顔を曇らしているのは、リングスネークの記憶だ。そんな彼女にリングスネークの娘なんて言って、失言したと思わないはずがない。
 ああ、殺されるなと自己完結した私の耳に、次の言葉は寝耳に水だった。
「知っていて当然。あなたは店を持っていながら探偵業もやってのけるし、何より暗殺の腕前がピカイチ。荒いことをしていながら、お偉いさん達はあなたの居場所を特定さえ出来ていない。トップクラスに入る一人の探偵で、また一人の暗殺者」
 予想外の返事に、びっくりしてしまった。讃えられたことももちろん嬉しいけれど、私の失言に対して何も思わないのか。
「...あ、ありがとう」
 礼だけを言うと、彼女は大きな瞳を細めてにっこりと笑った。それは、同性の私でもドキッとしてしまうような、そんな可愛らしい笑みだった。
「...と。話がずれてしまっていたな」
 だがそんな笑みも一瞬。レイチェルは笑顔を崩し、真剣な顔に戻す。
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