届かないことが、これほど苦しいものなんて。

変わらないはずの日常

変わらない町並み
変わらない通学路
変わらない君
毎日毎日繰り返される。
けど、嫌だと思ったことはない、一度も。
閑静な住宅街だけど子どもの声が頻繁に聞こえる、明るくて大好きな町。
ご近所さんはとてもいい人ばかりでよく声を掛けてくれる。
今となっては、仲良しでお茶会にまでお呼ばれするほど。
学校までの通学路、仲良くなったご近所さんに見送られながら坂を上る。
坂を上れば綺麗な並木道。
春には桜が満開で毎日の登校が楽しみになる。
その綺麗な並木道を一緒に歩く君。
見て桜!そうはしゃぐ私を横に早く行こうぜー、と面倒くさそうに言う。
なんだかんだ待っていてくれる。
時には一緒になってはしゃぎ回る。
どんな時でも君がいれば楽しかった。
楽しいと思えた。
その時間が大好きで…。



「れな〜!」
『ん〜?』
「俺今日部活オフになったけど、どうする?待ってよーか?」
『んんー、大丈夫!こうちゃん久しぶりのオフでしょ?ゆっくりしなよ!』
「わかった!ありがとな!部活頑張れ!」
と言えば、幸大ー!そう友達に呼ばれ足早に去っていく。
クラスが違うのは初めてだ。
小学校から中学校までずっと一緒だった。
人数が少なかったというのもあるのかもしれないけど、運命じゃないのか、と不思議に思うくらいに。
不安と期待を胸に秘め始まった高校生活。
できればこうちゃんと同じクラスがよかった。
けれどクラスは
『3組…』
「4組」
『…違うの?え、やだ』
「しょうがねぇだろ〜?今までは運が良すぎたんだよ」
『…友達できないかもしれない』
「できるできる!頑張れよぉ、ほら、笑え!どーせ俺は隣のクラス!」
そう私の頬を摘み笑っている。
その笑顔を見て勇気が湧いてくる。
がんばろう。

クラスまで一緒に行ったけど、クラスに入るのは私ひとりだけ。
こうちゃんは難なくクラスに入っていった。
私は、というと相変わらず人見知りで入るのにもど緊張。
緊張したときは…深呼吸を1回、そして右の小指を握る。これはこうちゃんに教えてもらったおまじない。

「れーちゃん!あのね、キンチョーしたときはしんこきゅうしたらいいんだよ!」
『…そうなの?』
「うん!あとね、はい!」
と小指を差し出してきた。
『え?』
「小指出して!」
そう言われ小指を出せば、こうちゃんは私の小指に自分の小指を絡めてきた。
「俺がいつもれーちゃんのみかた!」
と満面の笑顔で言われたのをまだ覚えている。
小指に秘めた2人の約束。
深呼吸を1回、小指を握り、教室のドアに手を掛けた。
ガラガラッーー
クラスにいた生徒の目線がこちらへ集まった。
驚きで心臓はバクバク、だけど勇気を出してクラスへ入った。
自分の席に座れば隣の席の女の子から話しかけられた。
「やっほ〜!はじめまして!私、泉和奏!」
『は、はじめまして。私、早川麗那です』
この、“わかな”という女の子は明るくてスポーティな女の子だった。
「そんな敬語じゃなくていいよぉ〜!れな!よろしくね!」
『う、うん。わかなちゃんよろしくね』
「わかなちゃんじゃなくて、“わかな”って呼んで!」
『わかった、わかな…!』
うん!と笑って返事をするわかな。
初めてできた友達。
嬉しくて涙が出そうになった。
ーこうちゃん、友達、できたよ。

和奏はクラスの人気者、和奏と仲良くなったおかげで私は案外早くクラスに馴染むことができた。
「いい友達に出会ったな〜」
そう呟けば
「え?それって私のこと?」
顔を覗き込んで期待の目を向ける。
当たり前だよ。そう言えば調子に乗っちゃうから、わざと
「さぁね」
「えー!私じゃないの?!」
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