片想いの奇跡






私は美大の受験生だ。自分の思想の創作に未来を馳せている。



では、何故私はこの、夢に沿えなく喜びもない居酒屋で深夜のアルバイトを続けるのか?



もちろん、僅かながらでも、その報酬が第一だ。私の家には金銭的余裕がなかった。そして、ささやかな楽しみ。しかし、それは仕事そのものにではなく、通勤の時間に於いてだ。



真夜中、十時に入店する。そして日付が変わって二時に店は終わる。



片付けやらで開放されるのは三時。



夜間業務は女子だからということでオーナーはあまり歓迎していないけれど、ほとんどが雑用だけれど、調理場からレジから「今日もお疲れ!ご苦労様!」の声が嬉しい。





< 2 / 45 >

この作品をシェア

pagetop