片想いの奇跡
私はそれを断った。当然未成年なのでお酒に関してはバツだから拒否は簡単なのだけれど、心のどこかで未知数の警戒心があった。それにカウンター席で並んで座っている。近すぎる。その段階で苦痛だった。
「じゃ、コーヒーにしようか?」
どうせ従業員が休憩に飲むインスタントだろうけれど、暫しの眠気覚ましにはいいかなと思い、私は頷いた。本当は外の自販機の缶コーヒーにしたかった。
「じゃ、それでいいです。ありがとうございます」
油を含んだような空気に香ばしいコーヒーの臭いが混じった。
「水鳥ちゃんってさ、今、彼氏、いるの?」
また始まった。それに下の名前で呼ぶのを止めて欲しい。