片想いの奇跡
「いませんよ」
毎日毎日、この質問。ウンザリだ。昨日の今日じゃないですか。そんな簡単にできませんよ。
少し冷めたカップを両手で持ち、私は項垂れた。電車で会う、というか、私が勝手に接近している、あのお気に入りの男性の姿を頭に浮かべた。
その瞬間、上坂さんに腕を肩に回され、ぐいと引き寄せられた。最初、何が起きたのかわからなかった。何かの危険を回避してくれたの?
しかし、その危険が上坂さんそのものだとは瞬時には悟ることができなかった。
そんなまま、私は上坂さんに強引にキスされた。
唇同士が触れて反射的に私は顔を背け、身を揉み、立ち上がった。
プラスティックのコーヒーカップは黒い液体を私のジーンズに全て任せ、床に転がった。