片想いの奇跡
そして、お金や身分証や電子マネーやお化粧や生理用品の入ったリュックを掴み勢い離れた。
あとはもう逃げ出すまでだ。上坂さんから目を離さないようにして背にした入り戸を開けた。
「何度も言うようだけど、チクっても無駄だぞ。誘った誘われたの水掛で拗れると厄介だぞ。結果俺は何もしちゃいないんだからな」
私は何も言わず、勢い、このおぞましい場を去った。
小走りに未明の街を進んだ。まだ無心から思いは進まない。
ふと交番が目に留まった。
中で座って作業している警官の姿がガラス越しに見える。