片想いの奇跡
しかし、現実を棄てて諦めたのは私だった。顔を背け不審に思って貰おうとは思わなかった自分に呆れながら私は歩を進めた。
私はとぼとぼと、それでも後ろを時々気にしながら、唇を持っていたウエットティッシュで拭いながら駅へ向かった。
あ、サンダルのままだった……。も、いいや。
気分が落ち着くと悔しさと腹立たしさが沸き上がった。
最悪のセクハラ。どうすればいいのだろう?店長に訴えようかな?キスだけだったけど、いや、逆にキスだけって、どう説明しよう。上坂さんの言う通り、彼自身が否定すれば話がややこしくなってしまうのではないだろうか?
立場が悪くなるのは私になるんじゃないだろうか?
こんな経験はしたことないし、私の未熟な社会的知識ではこの先どうなるのか見当もつかない。
このまま、泣き寝入りで辞めてしまおうか?
でも、それはそれで理由を聞かれるだろうし、シフトだって混乱する。