片想いの奇跡
「国立の……」
「ああ、デッサン、真っ黒にするタイプの試験の……」
「ご存知……あ、いえ、お詳しいんですか?」
「僕は八王子のちょいひとつ軽いとこ。昔の話だけど、途中で辞めちゃった」
「ああ、へえ……じゃ、デザインとか凄く……あ、どうして辞めちゃったんですか?」
「僕はね、落書きが好きだった」
「グラフィックですか?」
「今はそう呼ぶみたいだけどね、そんなカッコいいもんじゃない。夜中にこそこそ落書きしてる偏屈症のガキだっただけだ」