片想いの奇跡






だから私は推測と妄想の独身の彼と交わる。私にだけ優しければいいなあ。怒るところは怒って、でも、あ、でも、嫉妬しない程度に周りの女子にも優しさを……でもなあ、そうなると彼に好意を抱く人が絶対現れるなあ。複雑だなあ。でも、妄想だから、都合よく。私より好きになる女性は現れない。何故ならば、二人は最高のパートナーだから、誰も私たちを引き離せない。



そんなこと考えてる間に彼の降車駅がやって来る。



ドアが開き、彼はスマホからいったん目を離し、だけど、その目は私には向かわず、辺りの景色を窺うようにちょっと小首を傾げ、あ、そうか、彼はドアより身長が高いもんね。



行っちゃった……。



彼がいなくなった車内。



一気にテンションが下がる。



ここで、今日に限って何を思ったか、私は慌てて電車を降りた。





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