夜。〜キャバ嬢の恋〜
夜の終わり
 やめる、と伝えた私に店長は

『そうか』
 
とだけ言って、すぐに煌びやかで薄暗いフロアへ戻って行った。
 
 私は、ドレス姿のまま、立ち尽くす。

 ・・ひきとめてほしかったわけじゃない。
 自分でやめると決めたけど、中村さんとの思い出があるこの場所を失うのが、さびしかった。
 
 頭では中村さんを忘れると決めたけど、心が、さびしかった。


 私は二週間休んでいたし、売上も落ちていたから、用済みだったのかも知れない。

 お客さんには、学校が忙しくなったのでやめます、とメールした。お客さんからは、さびしいよ、というお世辞と、今後も定期的に会ってくれないか、という下心丸出しのメールがたくさん届いた。
 
 かえって来ないかも知れないと思ったけど、ゆめちゃんにもメールをした。


 『ゆめちゃん、ごめん、私、もうここにいられない。やめるね。。』


 



< 74 / 114 >

この作品をシェア

pagetop