夜。〜キャバ嬢の恋〜

昔ばなし


 オレが生まれたのは、北海道の片田舎だった。
 父さんは大工の頭領してて、母さんは父さんの仕事の書類なんかを手伝ってた。

 冬の厳しいその土地は、大雪が降ると仕事ができないい日もおおくて、
 オレは父さんが家にいて嬉しかったけど、家計は大変だった。母さんは化粧なんかしてなくて、まだそんなに年は行ってないはずなのに、白髪のせいで老けこんでた。

 父さんはオレに、大工道具の使い方を教えて、「筋がいいな」ってほめてくれたのが、うれしかったな。今も覚えてる。
 母さんはそれを見て、にこにこしていた。


 裕福じゃないけど、温かい家族。


 でもそれは、父さんが酒を飲むまでだ。
 あいつは、ひどく酒癖が悪くて、飲むと母さんを大声でなじった。その酒癖は、年々悪化していくようにも思えて、そのうち、暴力をふるうようになった。

 雪がふる、飲む、殴る・・・

 母さんの心も、家計も限界だったんだろう。

 オレは母さんと、春になるのをまって逃げ出した。


 
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