夜。〜キャバ嬢の恋〜
 母さんに連れられて、ついた先はススキノだった。
 大した特技があるわけじゃない母さんは、オレを育てるために、水商売をするしかなかった。
 水商売といっても、疲れ切った雰囲気の母さんが働ける場所なんて少なくて、なんとかスナックの仕事を見つけて、働いてた。

 オレは、いつの間にか中学を出て、工業高校に入った。

 中学時代は、勉強も、部活も頑張った。母さんが喜ぶのがうれしかったし、ひとりで家にいるのが退屈で、真面目にやってた。

 高校に入っても、真面目なオレのことを、先生はとてもほめてくれた。ほめられるためなら、どんなことでも頑張れた。
 担任の先生は、おっさんで、どこか記憶の中の父親と面影が似てて・・・
その先生に褒められたかった。

 ガキだったな。
 
 『おー、中村ぁ、頑張ってるなぁ。オレのクラスにお前みたいなやつがいて、先生は鼻がたけぇよ。』

 照れくさくて、恥ずかしいけど、心がほわっとするような、そんな感覚。
それがうれしくて、見てほしくて、頑張った。

 オレを見てくれた、先生。



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