夜。〜キャバ嬢の恋〜

 家出して、ぶらぶらして、女と遊んで、金を貢がせて、女の家に泊まる。

 『ねぇ~、はじめぇ、あたし、東京にいくのぉ』

 情事が終わった後独特の、なんか生臭いような、獣のニオイ。
 オレはそれが嫌いで、ヤッたあとはすぐにタバコを吸う。

 いつの間にかできた習慣。

 オレの背中に向かって、毛布を胸元まで掛けた女が声をかけてきた。

 『東京?何しにいくの?じゃあ、オレともう会えないの?』

 オレは、金をもらっている手前、子犬のような目で女に訴えた。

 『はじめ、かわいいー、だからさぁ、一緒に東京いこっ。あたし、東京でキャバ嬢になるんだぁ~』

 な!?」

 キャバクラ・・・、北海道でキャバクラはおさわりパブを示す。関東で言うキャバクラのことは「ニュークラ」というのがススキノの常識だった。

 だから、この時オレは「ついに風俗デビューするのか。ついて言ったら食わしてくれるかな」なんて調子のいいことを、腹の中で考えていた。





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