この恋は少しずつしか進まない



加島が本当に料理男子だったとして、毎日美味しいご飯を作ってくれたら私にもかなりのメリットがある。

だけどそれ以上に加島を家に置いてはいけないという防衛本能がしっかりと働いていた。

百歩譲って毎日の美味しい料理は諦める。でもひとつだけ私には譲れないことがあって……。


「ねえ、もしかしてプリンも作れたりする?」

そう、私は超がつくほどのプリン好き。もうプリンさえあればなにもいらないと思うほどに。

すると加島がニヤリと笑った。


「プリンなんてささっと材料混ぜて冷蔵庫で冷やせば完成っすよ。あ、知りません?俺が作るプリンはコンビニよりもクオリティー高いって有名ですよ」


嘘かもしれない。でも嘘だという証拠もない。


コンビニのプリンはもちろん冷蔵庫に切らさないようにストックしてあるし、むしろプリンを買うために節約してると言っても過言じゃない。


「ついでに生クリームとか乗せたら最高ですよね」

私の揺れ動く気持ちに加島も気づいていて、わざと私を試すようなことを言ってくる。


大丈夫。プリンよりも加島を家に上げるデメリットのほうが大きいから。

でもプリン……。いや、大丈夫、大丈夫。

私の意志は強い。

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