この恋は少しずつしか進まない






「へえ、けっこう広いんですね」


どうしてこうなったのだろう。絶対に受け入れないと決めていたのに何故か加島が私の家にいる。

私の意志はプリンという誘惑によって簡単に揺らいでしまった……。



「部屋綺麗ですね。俺はどこで寝たらいいですか?」


家にきて1分足らずで寝る話をしてくることにビックリするけど、部屋綺麗ですね、のあとに聞く質問じゃないと思う。



「あのさ、とりあえずここに座って」


私はお気に入りのクッションを指さした。座り心地がふわふわで美伽に『私専用』なんて言われているけど、加島は言われたとおりそこに腰を下ろした。


普通、人の家に上がる時には謙虚さが生まれるはずなんだけど、加島はあぐらをかきながら眠たそうにあくびをしている。


「単刀直入に聞くけどなんで家に帰れないの?さすがに理由を聞かずに家にはいさせられないよ」


本当は昼休みに尋ねるべきだったけど、あのあとチャイムが鳴ってしまったし。私だってまさか加島を家に上げる展開になるとは考えてなかったから。


「家族を敵に回しました」

加島の口調が真面目なものに変わった。

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