この恋は少しずつしか進まない
しばらくしてシャワーを浴び終わった加島が脱衣場から出てきた。今度こそ加島のペースにならないようにと、私はすかさず声をかける
「……あのさ!」
加島の行く手を塞ぐようにして仁王立ちしたまではよかった。
けれど、加島の上半身が裸なことに気づいて私の思考は一瞬にしてストップする。
「ちょ、ふ、服は!?」
慌てて視線を別の場所に向けた。
「考えてみたら俺、制服しか持ってきてないんすよ」
「だったらトレーナーを着ればいいでしょ。あのロゴがついてるやつ!」
「えー今は暑いっす」
動揺している私とは反対に加島はとても冷静だった。しかも勝手に冷蔵庫まで開けて飲み物まで探してるし、本当に遠慮という言葉を教えてあげたい。
だけど今は面と向かって説教できないことがムカつく。
細身なくせに意外といい身体つきをしてることが分かるぐらいばっちり見てしまったけれど……。
初めて上がった家なのに裸でうろうろするとかありえない。仮にも私は先輩で色気の欠片もないけど一応女子なわけだし。