この恋は少しずつしか進まない
私はケヤキに寄りかかって「ふう」とため息をはく。
たしかに私はなにかが抜けている性格をしている。大雑把と言えば聞こえはいいけれど、美伽から言わせれば自覚のない天然なんだそうだ。
……天然?そうかなあ?
テレビでよく見かける天然のタレントほど私はドジではないし、後輩からは頼りにされることも多い。
『水沢せんぱーい』なんて呼ばれると男女関係なく可愛いなと思える母性本能もあるし、けっこう世話焼きなので『水沢先輩はお母さんみたい』と言われることもある。
つまり、私は美伽以外の人からはとってもしっかり者に思われているのだ。
てっきり私も自分自身でそうだと思ってたんだけど……。
私のことを一番理解している美伽が違うと言うのなら、私はしっかり者なんかじゃないのかもしれない。
けれど、私の抜けている部分を知らない後輩は今日も私を頼りにしてくる。
「水沢先輩」
ほら、きた。