この恋は少しずつしか進まない
Chapter 3 こじれた過去
そして加島と迎える2回目の夜がやってきた。
顔に化粧水はたっぷり付けたし、美伽から『そんなに膝がガサガサしてる女子高生は見たことない』と言われて以来、ボディークリームも塗るようになった。
いつもならあとは布団をかけて寝るだけの状態なんだけど、もうひとつこれからしなければいけないことがある。
「なんでベッド片してんすか」
加島は昨日と同じように床に布団を敷いてゴロゴロとリラックス。一方の私は折り畳み式のベッドを畳んでキャスターのストッパーを外していた。
「片してるんじゃなくて、移動するんだよ」
そう言いながらベッドをキャスターで滑らせる。移動する場所はもちろん私の部屋。
「昨日みたいに隣で寝ればいいじゃないですか」
あっけらかんとした態度の加島にため息しか出ない。
「そういうわけにもいかないでしょ?昨日は一晩限りって約束だったからいいけど、これからも加島はうちにいるんだから同じリビングで寝るのはさすがにおかしいじゃん」
「そう、ですかね?」
「………」
加島に理解を求めてもダメだ。通じない。