この恋は少しずつしか進まない



虫全般が苦手だというのに、よりにもよってヤツと遭遇するなんて鳥肌が止まらない。

っていうか、なんで私の部屋に?ずっと使ってなかったから?

でも掃除はマメにしてたし、虫の侵入を防ぐために窓だって開けっ放しにしなかったのに……。


「先輩、Gのことキライなんですか?」

「当たり前でしょっ!好きな人なんている!?」

そう反論しながら身体が敏感になっていて無意味に足元や背後を確認してしまう。


「俺、けっこう平気ですけどね」

「じゃあ、なんとかして」

「分かりました」と、加島が部屋に入っていったから、私は素早くリビングへと避難した。


もう、本当にムリ……。 

っていうか平気な顔してヤツに立ち向かっていくとか、加島は勇者なの?


リビングでソワソワと待っていると加島が戻ってきた。
 
右手には丸められたティッシュ。どうやら息の根を止めてくれたようだ。

加島はティッシュをキッチンのゴミ箱へと捨てた。

……明日は朝一でゴミを捨てにいこう。あそこにいると思うだけでイヤだ。

< 39 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop