この恋は少しずつしか進まない
「先輩、今日の帰りにホームセンターに行くんですよね?」
学校まで続く線路沿いの道を私たちは並んで歩く。昨日は一緒に登校してることに違和感だらけだったけど、今日は不思議と自然体だった。
「うん。行くよ。ありとあらゆる備えをするためにね」
昨夜のようなことが起きないように家中至るところにヤツらを仕留める道具を置こうと思っている。
「じゃあ、俺も行きます。日用品とか揃えたいし、ホームセンターの近くにある古着屋で洋服も買おうかなって」
ああ、あの個性的なお店か。
入口にモアイ像みたいなものが置いてあるし、私の好みとは明らかに違うと外観で分かるから一度も入ったことはない。
「着替えが必要なら家に取りにいったらいいのに」
「それが出来たらとっくに家に帰れてますよ」
――『家族を敵に回しました』
なんて、言ってたけど本当になにをしたんだろう。
反抗期って感じでもないし、空気が読めないところはあっても親不孝するほどひねくれてるわけじゃない。
悪い子か良い子かって聞かれたら後者だと思うし、人の悪口も言わない人だから、そんなに揉め事を起こす理由が想像できない。
「ねえ……」と、聞き出そうとした時。背後からいきなり誰かに「わっ!!」と抱きつかれた。