この恋は少しずつしか進まない



「伊織、おはよう」

「……み、美伽」

「ビックリした?」

「したよ。朝ごはんと一緒に心臓が飛び出るぐらい」

「はは、ごめん」と、美伽が謝ったところで、視線が私から隣の加島へと移る。


「あれ、あれれ~?」

どこぞの名探偵みたいなわざとらしい言い方。


「もしかして朝帰りとか?」

美伽は私たちの顔を交互に見てニヤリとしていた。


「違いますよ。しっかりと先輩と一緒に寝て、学校に登校してるところですよ」

計算なのか天然なのか知らないけど、本当に加島は誤解を招くようなことしか言わないから困る。


「もう、加島はちょっと黙ってて!」

「なんで怒るんですか?本当のことでしょ?」

「本当のことだけど、アンタの言い方はいちいちやらしいんだよ」

「そうやって思う時点で先輩のほうがやらしいです」

「は?私は別に――」


ハッと気付くと美伽がまたなにかを言いたそうにニヤニヤしていた。 

……本当に加島といると心が乱されるからイヤだ。

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