この恋は少しずつしか進まない



たしかに美伽の言うとおり情けなんかじゃない。

家に帰れない事情を作った加島を可哀想とは思わないし、私がいなきゃなんて、責任感を抱いてるわけじゃない。


ただ、私以外の人に頼ることもできるのにしようとしない意地っ張りなところとか。

段ボールで家を作ろうと考える無謀なところとか。

子犬のようにすがってきたかと思えば生意気言ったり、顔は塩顔のに料理の味付けは濃くて私好みだったり。

人の話は聞かないけど、守ってと言ったルールを一生懸命やろうとしてるところがいいなって。

掴みどころがありそうで全然ない加島は苦手なタイプだけど、嫌いじゃない。

むしろ憎めないなって思ってる。


「私さ、伊織には年上より年下のほうが合ってると思うよ」

美伽がにこりと微笑む。

「えーなんで?」と聞き返した瞬間に、窓の外から黄色い声が飛んできた。


「加島くーん!」

それは一年生の女子。つまり加島の同級生だった。

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