この恋は少しずつしか進まない



どうやら加島は中庭を横切って食堂前の自販機へと向かっている途中のようだ。

「なに買うの?私も真似しちゃおうかな」なんて、女子は加島の隣にぴたりと並ぶ。


……加島のヤツ、よく飲んでる姿を見かけるから絶対にデカビタを買うつもりだな。

私もよく炭酸は飲むけど、口の中に甘さが残る飲み物は得意じゃない。でも加島はデカビタと一緒にご飯が食べられるタイプだし、野菜ジュースを飲みながら飴とかも舐められちゃう。

あんなに美味しい料理を作るくせに、やっぱりどこか変わってる。


「加島って心ではどう思ってるか知らないけど、ああいう下心丸見えの女子がしつこくしても邪険にはしないよね」

食堂へと繋がる通路に消えていくふたりのことを美伽も目で追っていた。


「邪険にするのも面倒くさいんじゃない?」

「優しいって答えにはしないんだ」

「だってそれ褒めてるみたいじゃん」

「褒めてあげなよ。今日もお弁当作ってもらったんでしょ?」

「う……」

たしかにお弁当を食べるのが今から楽しみではあるけど、素直に加島を褒めたくない自分がいる。

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