この恋は少しずつしか進まない



「そういえば今日クラスの女子が水沢先輩のことを話してましたよ」

校舎を出て、私たちはホームセンターへと向かっていた。


学校を出てすぐの時は『なんであのふたりが一緒に帰ってるんだろう』みたいな視線を生徒たちからされたけど、加島との仲を茶化す人は誰もいなかった。

おそらく加島のことを狙っている女子たちでさえ、私たちがどうこうなるなんて思ってないからだと思う。

だって相手は加島だもん。で、加島の相手が私だもん。

疑われることもありえない。


「彼氏との喧嘩を先輩に相談したら、仲直りできたって言ってましたよ」

ああ、昨日の昼休みの女の子か。


「みんな水沢先輩は頼りになる、憧れだって口を揃えて言ってましたよ」


……憧れ、ね。

そう言ってもらえて嬉しい気持ちはあるけど、みんなが抱いているイメージは本当の私じゃないから複雑。


多分、私は辰己さんと別れてからも、人から良く思われたい、大人に見られたいって願望があるんだと思う。 


そうしてれば、いつか彼が戻ってきてくれるとでも思ってるのかな。

自分でも未練がましくて呆れちゃう。

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