この恋は少しずつしか進まない
「直人、心配したんだよ。なんにも言わずにいなくなっちゃうから私不安で……」
「理沙(りさ)……」
どうやらこの美少女は理沙ちゃんと言うらしい。
「直人になにかあったんじゃないかと思うと夜も眠れないし、いくら連絡しても返してくれないから……」
理沙ちゃんはそう言って涙ぐんだ。……まつ毛長い。色白で肌もスベスベだしお人形が喋ってるみたいだ。
「……誰?」
まじまじと見すぎてしまったせいで、理沙ちゃんと目が合ってしまった。
「えっと」と、戸惑う私をフォローするように「学校の先輩だよ」と加島が説明してくれた。
「なんで学校外なのに一緒に歩いてるの?っていうか、その大量の洋服はなに?」
古着屋の袋は透明だからカラフルな洋服が丸見えだった。
……おそらく理沙ちゃんは中学生。このセーラー服はS中学のものだし、顔もどこかあどけなさが残っている感じだ。
「そんなに洋服を買い込むってことは、まさかこのまま家に帰らないつもりなの?みんな本当に心配してるんだよ?」
理沙ちゃんが小さく加島の指を掴む。
私に男心なんて分からないけど、こんなに赤ちゃんみたいに人差し指を握られたらたまらなく可愛いと思うだろうな。
さぞ加島は顔が緩んでいると思いきや、困った表情は一向に崩れていなかった。