この恋は少しずつしか進まない



スーパーに行った時は綺麗な夕焼けだったのに、今は満天の星空が広がっている。

……珍しい、こんなに星がよく見えるなんて。


「なんかコンビニで欲しいものでもあるの?」

今日はイヤな顔ひとつせずにお姉ちゃんの相手をよくしてくれていたし、アイスぐらいなら買ってあげないこともない。 


「夜道は危ないから付いてきただけですよ」

加島の言葉に私のまばたきが多くなる。

そういえば最初は防犯対策として、なんて理由で私に頼んできたこともあったっけ?
 

「襲われる素質はないから心配ないよ」

むしろ今まで危ない目に遭ったことなんて一度もない。痴漢も相手を選ぶということなんだろう。別になにかされたいわけじゃないけど。


「先輩、可愛いっすよ」

「……へ?」

想像してなかった返しにおかしな声が出てしまった。


「顔は童顔で明らかに末っ子キャラなのに、しっかり者のお姉さんってギャップがいいと思いますし、先輩のことを狙ってる同級生何人かいますよ」

「えー嘘、嘘」

「本当ですよ。先輩は自分のポテンシャルを分かってないですよね」

あれ、このセリフ美伽にも言われた気がする。

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