この恋は少しずつしか進まない



次の日。一晩泊まったお姉ちゃんは無事に彼氏が迎えにきて帰った。

二日酔いで頭が痛いと言っていたけど仕事は大丈夫かな……。あとでメッセージを送っておこう。

  
私と加島はもちろん二日酔いなんてないので通常どおりの時間に家を出た。

校門を抜けて昇降口に入る手前で、「おい、加島ー」と、同じクラスメイトだという友達に加島は声をかけられていた。どうやら朝練終わりのバスケ部のようで、加島を体育館へと誘っている。


「じゃ、先輩。俺ちょっと遊んできますね」

「え、あ、うん」

加島は餌に釣られた猫のように颯爽と行ってしまった。


予鈴が鳴るまであと10分足らずだけど、今からバスケをやるつもりなんだろうか。わざわざ汗を流しにいくなんて若いな。


そういえば聞いたことはないけど、加島って運動神経はどうなんだろう。

ルックスも人当たりもよくて、おまけに料理上手な加島には、たまに話が通じないという欠点しかないような気がする。

めちゃくちゃ運動音痴だったら面白いのになあ……と、思いつつ。体育館に確認しに行くほど興味もないから、私は下駄箱で靴を履き替える。

……と、その時。


「水沢先輩」

一年生の女子たちに名前を呼ばれた。

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