この恋は少しずつしか進まない



「ん?どうしたの?」

私はパタンと下駄箱の扉を閉める。


……もしかしてなにかの相談かな。もっと時間の余裕がある時にゆっくり聞いてあげたいんだけどな。


「あの、その……」

しかもなんだかとても言いづらそう。そんなに深刻な悩みなのかなと私も身構えていると……。


「先輩って、加島くんと付き合ってるんですか?」

「え?」

予想外の言葉に私は固まる。


「最近ふたりがは登下校も一緒だし、学校内でもよく話してるのを見かけるのでそうなんじゃないかってみんな噂してて……」

「つ、付き合ってない、付き合ってない!」


思わず連呼してしまったせいで怪しさが倍増してしまった。本当ですか?という女子の目に私は疑われないように言葉を足した。


「私、加島のことタイプじゃないし、あっちも私のことタイプじゃないし。だからこそ一緒にいられるっていうか、仲良く見えるのもお互い意識してないからこそで……」


あれ、なんだかこれじゃ余計に言い訳してるみたいじゃない?

動揺なんてしないで「はは、ないない」と笑い飛ばしたほうが自然だったんじゃないの?

そもそもなんで私、こんなに焦ってんだろう。

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