この恋は少しずつしか進まない
私たちは近くにあった公園に移動した。公園に着くなり理沙ちゃんはベンチに腰かけて、長い足を交互に組む。
学生カバンには友達に書いてもらったであろう落書きがしてあった。
【3年2組 仲良し 理沙大好き】
中学3年生ってことは、私の2つ下。
中学生から見れば高校生ってかなり大人に見えるもんだけど、それでもおばさんはないよね……。
「ねえ、アンタって直人とどういう関係?」
聞かれることは加島のことだって分かっていた。
「た、ただの先輩後輩だよ」
「絶対嘘。直人がただの先輩に買い物に付き合ってもらうことなんてないもん」
「そんなことないんじゃないかな」
「直人は洋服を買いにいく時は絶対にひとりで行くのよ!」
ギロリと睨まれて、私は困ったように首筋をぽりぽりと掻く。
今朝の女子たちのようにタイプじゃないからと言い訳したところで、納得してもらえる雰囲気じゃない。
「加島の洋服を買いにいくつもりで一緒にいたわけじゃないよ。私が他の用事があったから、ついでにって感じで加島は付いてきただけだから」
ありのままを答えたはずなのに、理沙ちゃんの怒りは収まらない。