この恋は少しずつしか進まない
「じゃあ、なんでアンタの用事に直人がついて行くの?」
「それは……」
「直人は私だけのものなの。アンタみたいなおばさんが直人の隣に一瞬でも並ばないでよ!」
……これを愛と呼んでいいのか悪いのか。
人様の恋愛に口出しするつもりはないし、趣味も人それぞれだけど、こんなに嫉妬深い子が彼女だった加島は大変だっただろうなって、ちょっと思った。
「……隣に並ばないなんて無理じゃないかな。私に限らず加島にも女友達がいるわけだし」
「それでもイヤなものはイヤなの!私の知らないところで直人が言い寄られていると思うと頭がおかしくなる」
理沙ちゃんは可愛い顔をぐしゃりと歪めていた。
「そんなに好きなんだね、加島のこと」
「当たり前でしょ!私たちは家も隣で親同士も仲がよくて小さい頃からずっとずっと一緒にいたんだから」
どうやらふたりは俗にいう幼なじみという関係のようだ。
「直人はカッコいいし、背も高いし、優しいし、私の理想の人なの。だから生まれた時から私は直人のことが好きなのよ!アンタみたいなおばさんには絶対負けないから」
加島のことをそんなにも想ってることは伝わった。でも宣戦布告されても私は勝負してるつもりはないし……。