この恋は少しずつしか進まない
まだ深い事実は知らないし、私が部外者であることに変わりはない。
でも、家に帰ろうとしない加島の気持ちなら、少しだけ分かる気がした。
「理沙ちゃん。加島だって、ワガママも言いたい時もあったかもしれないし、よしよしだってしてもらいたい時があったかもしれないよ」
「は?」
「してもらうことばっかり求めるのは違うと思う。恋愛はお互いに対等な立場で……」
――パンッ!!
その時。右頬に鈍い衝撃が走った。
「私に説教?おばさんは私と直人のことに口出さないで!」
そう声を荒らげて理沙ちゃんは公園を出ていった。
恋愛はお互いに対等な立場で、なんてどの口が言おうとしてたんだか。
じんじんとしている頬っぺた。
誰かに叩かれたのは、初めてだ。