この恋は少しずつしか進まない



まだ深い事実は知らないし、私が部外者であることに変わりはない。

でも、家に帰ろうとしない加島の気持ちなら、少しだけ分かる気がした。



「理沙ちゃん。加島だって、ワガママも言いたい時もあったかもしれないし、よしよしだってしてもらいたい時があったかもしれないよ」

「は?」

「してもらうことばっかり求めるのは違うと思う。恋愛はお互いに対等な立場で……」


――パンッ!!

その時。右頬に鈍い衝撃が走った。


「私に説教?おばさんは私と直人のことに口出さないで!」

そう声を荒らげて理沙ちゃんは公園を出ていった。


恋愛はお互いに対等な立場で、なんてどの口が言おうとしてたんだか。

じんじんとしている頬っぺた。

誰かに叩かれたのは、初めてだ。

< 78 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop